
発明とは、世の中にないものを作り出すこと。このように書くと、何かもの凄いことのように聞こえるかも知れませんが、その実態は「素材の組み合わせ」に過ぎないんです。ただ、その組み合わせは、人がやったことがないものでなければなりません。そのためには、組み合わせの元となる素材を常に持っておくことが必要です。しかも、コピーを取ったりファイルにストックしてもダメ。ファイルの中では何も発想は起きませんから。発明家はそれらの素材を常に自分の頭の中に、“組み合わせが起こりやすい状態”でインプットしておかなければなりません。
僕が自分を発明家だと定義したのは31歳の頃ですが、そこから31年間、ずっとインプットし続けてきました。ここまで来れば、インスピレーションや発明が「瞬間芸」できるようになります。
発明家にとって、自由度は何より大切な要素。僕は常日頃から、自由度の拘束につながりそうな要因は全て排除しています。例えば、人との約束。約束を守るには、その約束を忘れないためにずっと気に留めておかなければならない。これは自由度の拘束。だから僕はつい約束を破っちゃうんですよ。別に意識的に破っているつもりはないのですが、なにがなんでも、という拘束を自分に課したくないから、結果、忘れてしまうんです。それが“発明家”ということで許してもらえることもありますが、そういう行動を許せないという人も当然います。でも、別に日本人全員と付き合う必要もありませんから(笑)。つまり、自由なんですよ。常識観や流行からも自由。成功しなくちゃ、というような焦燥感からも自由。これも発明家ならではの感覚かも知れません。
学校に講演で呼ばれた時など、よく生徒と発明合戦をやるんです。「制限時間は30秒。どんなモノでもいいけど、発明というからには、世の中に無いものでないとダメだぞ」って。大学生にこんな挑発を……
藤村 靖之・フジムラ ヤスユキ
大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士課程卒。工学博士。発明起業塾塾長。大企業の研究室長などを歴任ののち、(株)カンキョーなど31社を発明起業。以後、特許庁工業所有権審議委員などを歴任。2006年度には内閣府総合研究開発機構助言者に。ガスコジェネレーション、イオン式空気清浄器など、現在までに出願した特許は1100を超え、約150を商品化、累積売上は1750億円。「発明」したら「起業」をする、あるいは、「起業」するなら「発明」をセットにして、と提唱する「発明起業家」。[おもな受賞歴]科学技術庁長官賞、発明功労者賞、93年アントレプレナー賞、その他多数。