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FEAUTURE
PERSON
シニアリサーチャー・脳科学者 茂木健一郎

―今回、「ホープフル・モンスターを探して」というイベントのために来福されたわけですが、まずその内容や目的について、話を聞かせていただけますか。
茂木氏 ホープフル・モンスターとは本来、進化生物学の概念から来た言葉です。その意味を簡単に言うと、今は奇妙な怪物に過ぎないけど、そのうちメインストリームになるかもしれない可能性を秘めた生物種というもの。そんな希望にあふれた怪物を探す旅を始めたわけです。
―現代のアーティストの中に、未来への希望をもった怪物が潜んでいると
茂木氏 今の若い人達は、閉塞感に行き詰まっているように思えます。その理由の一つは、いろんな分野で秩序やシステムがすでに確立されていて、生きていくためにはそのルールに従うしかないと、自己規定してしまっている。さらに言うなら、彼らには、“やけくそのエネルギー”が足りないと思う。もっと目上の人に突っかかって行ってもいいのに、妙に洗練され、スマートになっている。でも、そんな中にも何人かはすごく目つきのいいヤツがいる。そういうヤツらを見つけるのが、このイベントの最大の目的です。
―茂木さん自身は、もともとアートの世界に興味があったのですか
茂木氏 はい。小学校の時から油絵を習っていました。最近なぜか展覧会などの審査を頼まれる機会が多くて。そこであらためて思ったのが、アートって難しいということ。作品が出来上がるまでには、同時代の空気感みたいなものも敏感に感じ取らなければならないし、いくつもの要素が混在して一つの作品として成立しているのだと思うと、選ぶ立場側にいるはずの自分自身も審査されているような緊張感があります。そんな張りつめたアートの世界って、人生かける価値があると僕は思う。
―茂木さんが作品を評価する際の基準とは
茂木氏 主観です。主観で評価しないと作者に失礼だと思っています。アートの本質というのは、作品と向き合った時、虚心に何を感じるか、それがすべてだと思います。作り手と作品、それを評価する者すべてが共鳴しなくてはいけない。
―東京以外の都市を訪れてみて、アートの世界の中にもローカル性(地方性)というものがあるとお考えですか
茂木氏 それは気づかないうちにあると思います。ただ、作り手はあくまで普遍を目指すべき。アーティストの身体性とかローカル性などは、その結果として出てくるものだと思います。格好をつけていられる場合じゃない状況になって、自分の置かれている限定性や限界を受け入れた時、人間は初めて新しいものを生み出せるのです。俗に「地方」とか呼ばれて
茂木健一郎・モギ ケンイチロウ
1962(昭和37年)、東京生まれ
脳科学者。ソニーコンピューターサイエンス研修所シニアリサーチャー
東京大学理学部、法学部卒業後、同大大学院物理学専攻課程を修了理学博士。理化学研究所、英ケンブリッジ大学を経て現職クオリア(意識の中で立ち上がる、数量化できない微妙な質感)をキーワードとして脳と心の関係を探求し続けている
2005(平成17年)『脳と仮想』で小林秀雄賞受賞。他に『芸術脳』『クオリア降臨』など著書多数
NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」キャスターも務める