
1978年、アメリカ松下電器(当時)に出向して以来、パナソニック系現地企業の要職を歴任した岩谷英昭(ドン岩谷)氏。パナソニック退職後も、コンサルティング企業Simeon Consulting Group LLCの社長兼CEOとして、また、母校である明治学院大学の客員教授などとして、これまで蓄積した様々なビジネススキルや経験を、若い世代に伝え続けている。
-現在も「経営の神様」と呼ばれている、パナソニック創業者の故・松下幸之助氏。ドンさんが、幸之助氏から受け継いだものは。
ドン 私が松下電器産業 株式会社に入社した時、幸之助氏はすでに70歳を越えておられたので、職場で直接お会いする機会は余りありませんでした。ただ、彼の精神は間違いなく企業の隅々にまで息づいていて、そのひとつが「物作り」に対する徹底したこだわりです。
新製品が完成すると販売前の内覧会が行われるのですが、それに出席した幸之助氏は、「ええモンができたなぁ、ほんまにええモンができた」と、新製品に頬ずりするほどの愛情表現をなさんるんです。開発に携わった技術者たちにとって、こんなに嬉しい言葉は他にないでしょう?
でも、ひとしきり褒めた後、もうひと言付け加えるんですよ…「よっしゃ、これだけええモン作れるんなら、次はもっともっとええモン作れるな」。数多ある幸之助氏の金言の中に、「物を作るために人を作る」という言葉がありますが、実際に彼は、社員を上手に褒めて、上手に次の目標を持たせる達人だったと思います。
もうひとつ、これは私の座右の銘でもあるのですが、「志を持ち、成功するまでやり抜く」という言葉も、パナソニックの企業姿勢に活かされていますね。ある記者から失敗談を質問された時、幸之助氏はこう答えたそうです…「やると決めたら成功するまでやり続けるから、失敗の経験はありませんわ」。この気概を、私自身も持ち続けたいと考えています。
ドン岩谷 / Don Iwatani
1945年、岡山県出身。68年、明治学院大学経済学部卒業後、松下電器産業(株)入社。78年よりアメリカ松下電器(株)に出向、83年に一旦帰国後、88年よりアメリカ松下電器(株)パナソニック社に出向。96年、パナソニック・コンシューマ・エレクトロニクスの社長に就任、2000年にアメリカ松下電器(株)会長就任。現在、ABPS代表幹事、Simeon Consulting Group LLC社長兼&CEOとして活躍中。